【実践版】不倫慰謝料を請求されたら|初動対応から交渉・示談書作成まで
この記事を読んで理解できること
- 不倫慰謝料を請求されたらまず確認する3つのポイント
- 慰謝料請求されたときに絶対やってはいけない7つの行動
- そもそも慰謝料を支払う必要があるのか?免除・拒否できる5つのケース
- 請求された慰謝料は妥当か?不倫慰謝料の相場と金額を左右する要素
- 慰謝料を減額・免除するための5つのポイント
- 不倫慰謝料請求への対応の流れと示談書作成の注意点
- 不倫慰謝料請求で弁護士に相談するメリット
もしあなたが、
- 不倫相手の配偶者から、突然、慰謝料を請求された
- 内容証明が届いたが何をすればいいのか分からない
- 高額な慰謝料を請求されて支払えない
このような状況に直面した場合、多くの方は不安や焦りを感じてしまうでしょう。
実際、当事務所で解決した事例でも、職場の既婚者上司と関係を持った女性(Aさん)が、突然内容証明郵便で「300万円」もの高額な慰謝料を請求されたケースがあります。
【相手側 X弁護士から実際に届いた内容証明郵便の内容】
当職は、C氏の貴殿に対する損害賠償請求事件について委任を受けました。(CさんはAさんの不倫相手Bさんの妻)
貴殿は、C氏の妻であるB氏が既婚者であることを知りながら、同人との間で複数回にわたって不貞行為(以下「本件不貞行為」といいます。)に及びました。
本件不貞行為は、C氏の婚姻共同生活を維持する権利又は法律上保護される利益を侵害するものであり、不法行為に該当します。
本件不貞行為により、C氏とB氏との婚姻関係は、破綻の危機に瀕しています。
よって、C氏は、通知人に対し、300万円の慰謝料を請求します。
本書面到達後、1週間以内に下記の銀行口座へお振込みください。
期限までにお振込みがない場合は訴訟を提起いたします。
なお、今後、B氏へのご連絡は一切お控えください。
Aさんは
「300万円なんて大金、高すぎて払えない」
「裁判になると職場に知られるのではないか」
とパニックに陥っていましたが、弁護士が代理人として相手側弁護士と交渉を行った結果、最終的に「50万円(請求額の6分の1)」での解決に成功しました。
このように、弁護士の実務経験から言えば、慰謝料請求された場合の最も望ましい対応は、 できるだけ相手方には何も返事をせずに、すぐに弁護士に相談することです。
実際、不倫で慰謝料請求された時に、この初動の対応を誤ると、
- 本来支払う必要のない慰謝料を支払ってしまった
- 相場より高額な慰謝料を支払ってしまった
- 職場や家族に知られてしまった
など、取り返しのつかない事態を招くおそれがあります。
例えば、不倫が発覚し罪悪感にとらわれ、つい支払うことを約束してしまうと「合意が成立した」とみなされ、後で撤回することは極めて難しくなります。
また、一旦自分で交渉してこじれてしまうと、弁護士に相談しても手遅れな場合があるため、円満な解決が難しいケースもあります。
しかし、落ち着いて適切に対処すれば、慰謝料の減額や場合によっては支払いを免れることも可能です。
そのため、相手方から請求が来た時点で、すぐに不倫トラブルに強い弁護士に相談することが、最善の解決への近道です。
本記事では、不倫で慰謝料請求された際の初動対応から減額交渉、弁護士への相談まで、実務経験豊富な弁護士の視点から詳しく解説します。
目次
1章:不倫慰謝料を請求されたらまず確認する3つのポイント
不倫の慰謝料請求を受けた際、まず冷静になって以下の3点を確認することが重要です。
焦って行動すると、後で不利な状況に陥る可能性があるため注意が必要です。
1-1:誰から・いくら請求されているのか確認する
最初に確認すべきは「誰から」「いくら」請求が来たのかという点です。
電話で請求された場合は、電話口の相手が本当に不倫相手の配偶者本人なのか、あるいは代理人の弁護士なのかを必ず確認しましょう。
書面で請求された場合は、作成者の名義を必ず確認してください。
相手方の代理人として弁護士から連絡が来た場合、相手方本人に直接連絡してはいけません。
弁護士ではなく本人に連絡することは違法行為となる可能性があるため、必ず弁護士を通じてやり取りをすることが重要です。
また、請求額についても、正確に把握しておく必要があります。
口頭での請求の場合は、金額をメモに残し、可能であれば録音しておくことをおすすめします。
1-2:請求内容と証拠を冷静に把握する
次に、相手が何を根拠に慰謝料を請求しているのかを確認しましょう。
具体的には、以下の点を把握する必要があります。
- いつ、どこで、どのような行為を不倫だと主張しているのか
- どのような証拠(写真、LINE、メール等)を持っているのか
- 相手方夫婦の現在の状況(離婚予定か、別居中か、婚姻関係継続中か)
- 支払期日や回答期限は設定されているか
- 慰謝料以外の要求(退職や引越等)があるか
相手の主張する内容が事実と異なる場合や、証拠が不十分な場合は、慰謝料の減額や支払いを拒否できる可能性があります。
逆に、不用意に事実を認めてしまうと、後から覆すことが極めて困難になります。
1-3:不倫慰謝料の相場を知っておく
慰謝料請求を受けたら、不倫慰謝料の一般的な相場を知っておくことが重要です。
なぜなら、相手が提示する金額は、往々にして相場を大きく上回る高額な請求が多いためです。
■不倫慰謝料の相場
- 夫婦関係が継続する場合:50万円〜100万円
- 不倫が原因で別居に至った場合:100万円〜200万円
- 不倫が原因で離婚に至った場合:150万円〜300万円
実務上、最初に300万円〜500万円といった高額な慰謝料請求をされることは珍しくありませんが、実際の相場はこの範囲内に収まることがほとんどです。
中でも多くのケースは、100万円~200万円の慰謝料で合意しています。
この相場を知っていれば、不当に高い請求に対して冷静に減額交渉を進められます。
Aさんのケースでも、内容証明の段階で弁護士に相談したことで、
- 相手の請求額が相場を大きく上回っている点(300万円 → 相場100万円前後)
- 配偶者側のBさんが「妻とは離婚調停をしている」などと虚偽の説明をしていたこと
- 相手に離婚の予定がないこと
など、減額につながる要素を事前に把握できました。
この「事実確認」のステップが早い段階でできたことが、 後の大幅減額につながった典型例と言えます。
【Aさんから当法律事務所Y弁護士への相談】
Aさん:内容証明を受け取りましたが、まだ相手の弁護士には連絡してないんです。まずいですよね?
Y弁護士:いえ、相手に連絡しなかったのは賢明なご判断ですよ。相手は交渉のプロですから、連絡をした際に言いくるめられ、合意をさせられてしまう可能性があります。一度合意した内容は簡単には取り消すことができません。
Y弁護士:それに、300万円という請求金額は高すぎます。減額交渉をしましょう。
2章:慰謝料請求されたときに絶対やってはいけない7つの行動
不倫で慰謝料を請求された場合、以下の行動は絶対に避けてください。
これらの対応をしてしまうと、取り返しのつかない結果を招くおそれがあります。
2-1:相手の言い値で即座に支払う・支払いを約束する
「早くトラブルを終わらせたい」という焦りから、相手の言い値で慰謝料を支払ってしまったり、支払いを約束したりすることは最もやってはいけない行動です。
支払うことを約束すると、「合意が成立した」と認められるため、後で撤回することは極めて難しくなります。
これは口頭での約束であっても同様です。
不倫をしたとしても、状況によっては慰謝料を支払う必要がないケースや、相場より大幅に減額できるケースが多いです。
しかし、一度支払ってしまったり約束してしまうと、後から「慰謝料が高すぎた」と気づいても、取り返すことはほぼ不可能です。
請求を受けても、すぐに支払いに応じたり約束したりせず、まずは冷静に状況を分析することが重要です。
Aさんのケースでは、内容証明を受け取った直後は相手に連絡しなかったため、 不利な形の示談でまとめられてしまう事態を避けられました。
もし不安のあまり「支払います」と返事してしまっていたら、 そのまま300万円で合意扱いになっていた可能性があります。
2-2:示談書・合意書に安易にサインする
相手が作成した示談書や合意書を提示された場合、その場でサインすることは絶対にやめてください。
相手側が作成する示談書は、次のような問題を含んでいることがほとんどです。
- 相場を大きく上回る高額な慰謝料が設定されている
- 清算条項がなく、後から再度請求される可能性がある
- 支払期日が短く設定されており、支払いが困難
- 高額な違約金条項が含まれている
- 退職や引越など、金銭以外の不当な要求が盛り込まれている
一度サインした示談書を後から変更することは、よほど特殊な事情がない限り極めて難しいです。
示談書へのサインは、必ず弁護士に内容を確認してもらってから行いましょう。
2-3:口約束だけで済ませる
慰謝料の金額や支払方法、その他の条件について口頭で合意し、書面化せずに先に慰謝料を支払ってしまうことも危険です。
口約束だけで済ませると、次のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 慰謝料を支払ったのに再度請求される
- 「言った」「言わない」の水掛け論になる
- 後から「やはり金額が少ない」と追加請求される
トラブルを防ぐためには、決定事項は必ず書面化し、双方が署名・押印した形で証拠を残すことが不可欠です。
ただし、法律知識がない状態で書面を作成すると、不利な内容になる可能性があるため、弁護士に相談して適切な内容の書面を作成することをおすすめします。
2-4:弁護士を通さず相手方本人や配偶者に直接連絡する
弁護士から連絡が来た場合、相手方本人に連絡してはいけません。
弁護士が相手方の代理人として窓口を務めているため、弁護士ではなく本人に連絡することは違法な行為となるからです。
また、相手方から慰謝料請求が来た際に、「配偶者(あなたの不倫相手)には連絡するな」と言われることが多くあります。
実は、この要求には法的な拘束力はありません。
あなたが「配偶者に連絡しません」と約束した後で連絡した場合は契約違反になりますが、約束していなければ、単なる相手方の要望にとどまります。
ただし、以下の点に注意が必要です。
- 不貞行為を続けた場合、慰謝料が増額される可能性が非常に高い
- 不貞行為はせずに連絡した場合も、反省がないとして慰謝料が増額される可能性がある
- 相手方に弁護士がついている場合、本人への直接連絡は違法行為となる
そのため、最低限の事実確認を除き、できるだけ相手方の配偶者には連絡しないことが望ましいです。
特に弁護士が代理人についている場合は、絶対に本人に連絡してはいけません。
2-5:感情的に反論して相手を刺激する
慰謝料を請求された際、「慰謝料なんて支払わない」「不倫なんてしていない」と感情的に強く反論したり、相手を挑発したりするような言動は避けましょう。
請求者は強い怒りを抱いているため、感情を逆なでする発言をすると、以下のような報復行動に出る可能性があります。
- 職場や近所に不倫の事実を言いふらす
- インターネット上に個人情報や不倫の内容を拡散する
- 家族に直接連絡して不倫をばらす
このような事態になった場合、名誉毀損で告訴できる可能性はありますが、一度広まった情報を完全に消すことはできないため、社会的信用を大きく損ねてしまいます。
たとえ言い分があっても、感情的にならず冷静に対応することが重要です。
対応が難しいと感じた場合は、「弁護士に相談してから回答します」と伝え、その場での議論を避けましょう。
2-6:請求を完全に無視する
相手方からの請求に対応する方法が分からないからといって、慰謝料請求を完全に無視することも避けるべきです。
無視を続けると、相手は「話にならない」と判断し、弁護士を立てて正式な法的手続きに移行する可能性が高まります。
最悪の場合、裁判を起こされ、自宅や職場に訴状が届いてしまい、家族や職場に知られる事態になりかねません。
時間的余裕がない場合でも、「手紙を受け取りました」「内容を確認して改めて連絡します」といった簡単な返答だけでも行うことが重要です。
2-7:事実と異なることを認める
相談者の中には、突然の慰謝料請求に動揺し反論できず、焦って事実と異なることを認めてしまうケースがあります。
例えば、以下のような状況です。
- 肉体関係はないのに「あった」と認めてしまう
- 自分から誘っていないのに「誘った」と認めてしまう
- 不倫の回数や期間を実際より多く認めてしまう
- 相場を大きく超える慰謝料額に合意してしまう
相手は感情的になっていることが多く、その勢いに押されて事実と異なることを認めてしまうと、後から訂正することは極めて難しいです。
もし録音されていた場合は、その発言が決定的な証拠となってしまいます。
事実と異なることは明確に否定し、相手の言い分をその場で安易に認めないようにしましょう。
3章:そもそも慰謝料を支払う必要があるのか?免除・拒否できる5つのケース
不倫の事実があっても、状況によっては慰謝料を支払う必要がない、あるいは大幅に減額できるケースがあります。
以下の条件に該当する場合は、請求を拒否できる可能性があります。
3-1:肉体関係がない場合
法律上、慰謝料請求の対象となる「不貞行為」とは、配偶者以外の異性と自由な意思で肉体関係を持つことを指します。
したがって、肉体関係がない場合は、原則として慰謝料の支払い義務は発生しません。
デートやキスだけで肉体関係がない場合、基本的には慰謝料請求を拒否できます。
ただし、頻繁なデートやキス等の行為が「夫婦の平穏な共同生活を侵害する」と判断される場合、少額の慰謝料が認められるケースもありますが、通常の不貞行為と比べて大幅に減額されます。
肉体関係があることは、請求者側が証明しなければならない事項です。
安易に事実と異なることを認めず、証拠の有無を慎重に確認しましょう。
3-2:既婚者だと知らなかった場合
慰謝料請求が認められるためには、不倫相手が既婚者であることを「知っていた」(故意)、または「知り得た」(過失)という要件が必要です。
以下のような場合は、故意・過失がなかったと判断され、慰謝料の支払いを拒否できる可能性が高いです。
■故意・過失がないと認められやすいケース
- 婚活パーティーや結婚相談所で出会った
- マッチングアプリのプロフィールで「独身」と記載されていた
- 相手の家族に紹介され、独身だと信じる合理的理由があった
- 婚約指輪をもらっていた
- 一貫して独身であるように装われていた
このような状況では、通常は相手を未婚者と信じても仕方がないため、「既婚者かもしれない」と注意すべき義務はないと判断されます。
ただし、次のような場合は「過失あり」と判断される可能性があります。
- 元々既婚者と知っていたが「別れた」と言われて安易に信じた
- 同じ職場の同僚で、既婚者かどうか簡単に調べられた
- 家に一度も招かれない、土日に会えないなど不自然な点が多かった
故意・過失の有無は個別の状況によって判断されるため、判断が難しい場合は弁護士に相談することをおすすめします。
3-3:不倫前から夫婦関係が破綻していた場合
不倫が始まった時点で、すでに夫婦関係が破綻していた場合、不倫によって夫婦関係が害されたとは言えないため、慰謝料の支払い義務が発生しない可能性があります。
夫婦関係の破綻が認められる条件としては、以下のようなケースがあります。
- 長期間(通常は数年以上)別居していた
- 双方に離婚の意思があり、具体的な離婚協議をしていた
ただし、夫婦関係の破綻は非常に厳格に判断されます。
別居していても、日常的に連絡を取り合っていたり、家族旅行に行っていたりする場合は、破綻が認められない可能性が高いです。
また、破綻していたことを証明する責任は、慰謝料を請求された側にあります。
証拠がない状態で主張しても認められにくいため、弁護士と相談しながら慎重に対応することが重要です。
3-4:自分の意思ではない場合(強要・脅迫)
強姦や脅迫など、自分の意思に反して肉体関係を強要された場合は、故意・過失がないため慰謝料の支払い義務は発生しません。
ただし、「断ることができた」「自分の意思で応じた」と判断される状況では、この主張は認められません。
実際に強要・脅迫があったことを証明する必要があるため、具体的な状況を詳しく説明できることが重要です。
判断が難しいケースも多いため、このような状況で慰謝料を請求された場合は、必ず弁護士に相談してください。
3-5:時効が成立している場合
不倫の慰謝料請求には時効があり、以下の期間が経過すると請求権が消滅します。
■不倫の慰謝料請求の時効
- 不貞行為および不倫相手を知った日から3年
- 不貞行為があった日から20年(不倫相手を特定できない場合)
時効が成立している場合は、慰謝料を支払う必要はありません。
ただし、時効が完成していても、時効を援用(時効が成立しているので請求を拒否するという意思表示)をする必要があります。
いつから時効期間を数え始めるか、時効の起算点の判断は複雑なため、時効が成立している可能性がある場合は、弁護士に相談して正確に判断してもらうことをおすすめします。
4章:請求された慰謝料は妥当か?不倫慰謝料の相場と金額を左右する要素
慰謝料の請求を受けたら、その金額が妥当かどうかを判断することが重要です。
4-1:不倫慰謝料の相場は50万円〜300万円、多くのケースは100万円~200万円
不倫慰謝料の相場は、夫婦関係の状況によって異なります。
- 離婚しない場合:50万円~150万円
- 離婚した場合:150万円~300万円
不倫が原因で離婚する方が、配偶者の精神的苦痛が大きいと考えられるため、慰謝料額も高くなる傾向があります。
以上の相場から「不貞行為の慰謝料は50万円~300万円」と言われますが、実際には50万円になるケースも300万円になるケースも極めて少なく、多くのケースは100万円~200万円です。
ただし、これはあくまで一般的な相場であり、個別の事情によって金額は増減します。
相場を大きく超える金額を請求された場合は、減額交渉の余地が十分にあります。
4-2:慰謝料額を増額・減額する要素とは
不倫による精神的損害は、明確に金額を測定することができないため、裁判所が以下のような要素を総合的に考慮して決定されます。
■慰謝料が増額される要素
- 婚姻期間が長い(15年以上など)
- 不倫期間が長い
- 不貞行為の回数が多い、頻度が高い
- 不倫の内容が悪質(妊娠、同棲など)
- 不倫相手の配偶者が精神疾患を患った
- 未成年の子供がいる、子供の人数が多い
- 謝罪や反省がない
■慰謝料が減額される要素
- 婚姻期間が短い(3年以内など)
- 不倫期間が短い(3ヶ月以内など)
- 不貞行為の回数が少ない(3回以下など)
- 不倫を始めた時点で夫婦関係が冷め切っていた
- 不倫相手から強く誘われた、主導権がなかった
- 真摯に謝罪し、反省している
- すでに不倫相手の配偶者が慰謝料を受け取っている
これらの減額要素が多く当てはまる場合は、相場よりも低い金額で示談できる可能性が高まります。
4-3:相場より高額な請求への対処法
300万円、500万円といった相場を大きく超える金額を請求された場合、その金額をそのまま支払う必要は全くありません。
まず、上記の減額要素に該当する事情がないか確認し、
ある場合は、それを根拠に減額交渉を進めます。
裁判になった場合でも、裁判所は個々の事情や過去の判例に基づいて金額を決定するため、不当に高い金額が認められることはほとんどありません。
そのため、交渉材料として「裁判になっても、この金額は認められない」と主張することも有効です。
ただし、法的根拠を示しながら説得力のある交渉を進めるためには、専門知識が必要です。
高額請求を受けた場合は、弁護士に依頼して適正な金額まで減額することをおすすめします。
5章:慰謝料を減額・免除するための5つのポイント
慰謝料を減額するためには、戦略的な交渉が必要です。
Aさんのケースでは、Y弁護士はAさんから依頼を受け、相手側 X弁護士に連絡し次のように交渉しました。
【交渉経緯】
Y弁護士:Aさんは不貞行為を認め、真摯に反省しています。300万円というご請求金額はあまりにも高額ですので、減額していただけないでしょうか。
X弁護士:Cさんは大変お怒りなので、減額などと言ったら裁判になるでしょうね。
Y弁護士:(本当かな?300万円が高すぎることは相手も分かっているはずだ)
そうですか。残念ですが、裁判にしていただくしかありませんね。
X弁護士:…まあ、反省はしているようですから、多少の減額はしましょう。200万円でいかがですか。
Y弁護士:申し訳ありませんが、裁判例上の相場に鑑みて高すぎます。こちらの提案は50万円です。
X弁護士:50万円!?ふざけているんですか。これでは検討することもできませんよ。
Y弁護士:ふざけていませんよ。まず、不貞行為が行われた回数は3回にとどまります。また、Y先生がAさんに送った書面には、「今後、B氏へのご連絡は一切お控えください」と書かれていましたね。ということは、CさんはBさんと離婚する意向はないのではありませんか?
X弁護士:確かに、今のところはありませんが…
Y弁護士:そうだとすると、裁判例上の相場は100万円くらいが限界でしょう。
Y弁護士:さらに、AさんはBさんに対して、支払った慰謝料の半分程度を請求する「求償権」があります。こちらの提案は、AさんのBさんに対する求償権を放棄するという条件で、100万円の半分にあたる50万円をお支払いするというものです。
X弁護士:なるほど…一度検討しましょう。
後日、X弁護士からY弁護士宛てに、「求償権放棄を条件に50万円で示談に応じる」との通知があり、無事に示談が成立しました。
以上のように、交渉ではいくつかのポイントを押さえることで、減額の可能性が高まります。
5-1:誠実な謝罪と反省の姿勢を示す
不倫の事実がある場合、相手に対して誠実に謝罪し、反省の姿勢を示すことは、慰謝料減額の重要な要素です。
裁判でも、謝罪や反省の有無は慰謝料額を決める判断材料の一つとされています。
相手の怒りを和らげ、冷静な話し合いができる状況を作ることで、減額に応じてもらえる可能性が高まります。
ただし、謝罪のタイミングや方法を誤ると、かえって不利になることもあります。
特に、不貞行為をしていないのに謝罪してしまうと、事実を認めたと判断される危険があるため、謝罪の仕方については、弁護士と相談しながら慎重に進めることをおすすめします。
5-2:減額要素(期間・回数の短さ等)を具体的に主張する
前述の減額要素に該当する事情がある場合は、具体的に主張することが重要です。
例えば、以下のような主張が考えられます。
- 不倫期間は2ヶ月間のみで、肉体関係も2回だけでした
- 婚姻期間はまだ1年で、夫婦関係は継続しており、離婚には至っていません
- 不倫相手の配偶者から強く誘われ、断り切れずに関係を持ってしまいました
- すでに不倫相手の配偶者から100万円の慰謝料を受け取っているはずです
これらの事情を証拠と共に示すことで、減額の根拠を明確にできます。
Aさんの事例でも、Bさんから「妻とは離婚調停をしている」と虚偽の説明を受けていました。
また、相手方夫婦が離婚を予定していない点も減額の重要な要素となり、 「配偶者側の主導性」「離婚予定なし」が減額交渉の根拠として有効に働きました。
ただし、相手側が弁護士を立てている場合、法的根拠のない主張は通用しないため、弁護士に依頼して過去の裁判例や法律に基づいた説得力のある主張が必須です。
5-3:求償権の放棄を交渉材料にする
相手方夫婦が離婚しない場合、「求償権の放棄」を条件に慰謝料を減額できる可能性があります。
求償権とは、不倫当事者の一方が自分の責任分を超えて慰謝料を支払った場合、もう一方の当事者(不倫相手の配偶者)に超過分を請求できる権利です。
例えば、慰謝料の総額が100万円で、あなたと不倫相手の責任が半分ずつの場合、あなたが100万円全額を支払ったとすると、不倫相手に50万円を請求できます。
ところが、相手方夫婦が離婚しない場合、家計は一つなので、100万円をもらっても後から配偶者が50万円を払えば、実質的には50万円しか残りません。
そこで、「求償権を行使しない(不倫相手に請求しない)ことを約束するので、最初から慰謝料を50万円にしてください」と交渉する方法があります。
この交渉は夫婦が離婚しない場合に特に有効で、大幅な減額が期待できます。
Aさんのケースでは、弁護士が「求償権を行使しない」ことを条件に提示した結果、 最終的に相手側弁護士もこれを受け入れ、 50万円での示談が成立しました。
「夫婦が離婚しない」という事情がある場合、 求償権放棄は極めて強力な減額材料になることが、この事例からも明らかです。
5-4:経済的困窮を証明する
収入や資産が少なく、請求された金額を支払う経済的余裕がない場合、その事情を具体的に示すことで減額を認めてもらえる可能性があります。
相手も、慰謝料を回収できる見込みが低ければ、弁護士費用や時間をかけて裁判を起こすことを躊躇します。
そのため、支払可能な金額の範囲内で示談に応じてもらえる可能性が高まります。
ただし、単に「お金がない」と言うだけでは応じてもらえる可能性は低いため、客観的な資料を示し、支払可能な金額を具体的に提案することが重要です。
経済的困窮を主張する際は、以下のような資料を提示します。
- 給与明細や源泉徴収票
- 預金通帳のコピー
- 借金や住宅ローンの残高証明
- 扶養家族の状況
5-5:早期一括払いを条件に減額を求める
早期に一括払いすることを条件として、減額を求める方法も効果的です。
相手側も、長期間にわたって交渉を続けたり、分割払いで少しずつ回収したりするよりも、早い段階でまとまった金額を一括で受け取れる方を望む場合があります。
早期解決によって不倫相手との関係を断ち切れ、精神的負担が軽減されるメリットがあるため、この条件に応じてもらえる可能性は高いです。
例えば、「300万円の請求に対し、200万円を今月末までに一括で支払う」といった提案をすることで、大幅な減額が実現できるケースもあります。
6章:不倫慰謝料請求への対応の流れと示談書作成の注意点
慰謝料請求を受けてから解決までの一般的な流れと、各段階での注意点を解説します。
6-1:請求方法別の対処法(内容証明・弁護士・裁判)
慰謝料請求の方法によって、緊急度や対応方法が異なります。
6-1-1:メール・電話での請求
相手が弁護士に正式に依頼していない可能性が高く、いきなり訴訟になる可能性は低いです。
ただし、請求を無視した場合、相手を刺激し職場や家族に言いふらされるなどの報復行為に出られる危険があります。
簡単な返答をして時間を稼ぎ、その間に弁護士に相談することをおすすめします。
6-1-2:内容証明郵便での請求
相手が、本気で慰謝料請求を進めようとしている証拠です。
内容証明には請求額や支払期日が記載されていることが多いですが、その期日は相手が一方的に設定したものであり、絶対に従う必要はありません。
ただし、完全に無視すると、次は弁護士が出てくる可能性が高いため、できるだけ早く弁護士に相談しましょう。
6-1-3:弁護士を通じての請求
弁護士を通じての請求の場合、相手側には証拠も十分に揃っていると考えられます。
個人で対応すると、法律の専門家である相手側弁護士に主導権を握られ、不利な条件で示談させられるおそれがあります。
相手が弁護士を立てた場合は、こちらも必ず弁護士に依頼して対等に交渉できる体制を整える必要があります。
6-1-4:裁判所からの訴状
自宅や職場に訴状が届いた場合、相手は本気で裁判を進める意思があります。
訴状には第1回口頭弁論の期日が記載されていますが、この期日に出席する必要はありませんが、代わりに「答弁書」を裁判所に提出する必要があります。
答弁書を提出せず、第1回期日にも出席しないと、相手の主張が全て認められ、敗訴してしまいます。
答弁書の作成には法律知識が必要なため、訴状が届いたらすぐに弁護士に相談してください。
6-2:回答書の作成と送付方法
内容証明などで慰謝料を請求された場合、できるだけ早く「回答書」を作成して送付する必要があります。
回答書には以下の内容を記載します。
- 不倫の事実関係を認める部分と認めない部分
- 謝罪と反省の意思表示
- 慰謝料を支払う意思はあるが、減額を希望する旨
- 希望する慰謝料額と支払方法
- 示談書を取り交わしたい旨
回答書は、配達証明郵便で送付し、確実に相手に届いたことを証明できるようにしましょう。
ただし、回答書の内容が不適切だと、かえって不利になる可能性があります。
特に、不貞行為をしていないのに認めるような内容を書いてしまったり、不利な条件を提示してしまったりすると、後から覆すことが困難です。
回答書を作成する前に、必ず弁護士に内容を確認してもらうことを強くおすすめします。
6-3:示談交渉から示談書作成までの手順
回答書を送付した後は、相手との示談交渉に入ります。
交渉では、慰謝料の金額、支払方法、その他の条件について話し合い、双方が合意できる条件を模索します。
交渉が成立したら、必ず示談書を作成しましょう。
示談書を作成することで、後から「言った」「言わない」のトラブルを防ぎ、再度請求されるリスクを回避できます。
示談書は、相手側が作成する場合もあれば、こちら側で作成する場合もありますが、いずれの場合も、内容を十分に確認してからサインすることが重要です。
Aさんのケースでも、弁護士同士での交渉を経て、 求償権放棄・50万円支払いを条件とした示談書が作成されました。
弁護士の介入がなければ、相手側の一方的な条件で示談書が作られていた可能性があります。
6-4:示談書に必ず記載すべき7つの項目
示談書には、以下の項目を必ず記載する必要があります。
- 当事者の氏名・住所
- 不倫の事実
- 慰謝料の金額
- 支払方法(一括・分割、支払期限、振込先など)
- 守秘義務条項(不倫の事実を第三者に口外しない)
- 清算条項(合意した以上の債権債務は存在しないことの確認)
- 署名・押印
特に重要なのが「清算条項」です。
この条項がない場合、慰謝料を支払った後で「やはり金額が少なかった」と再度請求されるおそれがあります。
示談書の作成は、後のトラブルを防ぐために極めて重要です。
相手側が作成した示談書は、相手に有利な内容になっていることがほとんどなので、必ず弁護士にチェックしてもらいましょう。
7章:不倫慰謝料請求で弁護士に相談するメリット
不倫の慰謝料請求に対応する際、弁護士に相談・依頼することで多くのメリットが得られます。
7-1:弁護士に依頼する4つのメリット
- 慰謝料の減額・免除の可能性が高まる
弁護士は法律と判例の専門知識を持っているため、あなたの状況に応じた最適な主張を組み立て、説得力のある交渉ができます。
個人で交渉するよりも、大幅な減額が期待できます。
- 手間・時間・精神的ストレスを最小限にできる
弁護士が代理人となることで、相手との直接のやり取りが不要になります。
感情的な相手と何度も話し合う必要がなくなり、精神的な負担を大きく軽減できます。
また、書面の作成や裁判手続きなど、複雑な手続きも全て弁護士に任せられるため、日常生活への影響を最小限に抑えられます。
- 職場や家族にバレるリスクを軽減できる
相手が感情的になって職場や家族に不倫をばらそうとする場合、弁護士が介入することで、そうした行動を抑止できる可能性が高まります。
また、裁判になった場合でも、弁護士が全て対応するため、あなたが裁判所に出向く必要がなく、周囲に知られるリスクを減らせます。
- 結果的に費用を節約できる場合が多い
弁護士費用がかかるため「自分で対応した方が安い」と考えがちですが、実際には弁護士に依頼した方が総合的な費用負担が少なくなるケースが多いです。
例えば、相場300万円の慰謝料を請求され、自分で対応して200万円に減額できたとしても、弁護士に依頼すれば80万円まで減額できる可能性があったとします。
弁護士費用が50万円かかったとしても、トータルでは弁護士に依頼した方が70万円も得になります。
7-2:不倫トラブルに強い弁護士の選び方
弁護士を選ぶ際は、以下のポイントを重視しましょう。
- 不倫トラブルの解決実績が豊富であること
- 慰謝料の減額交渉を専門的に扱っていること
- 初回相談が無料で、気軽に相談できること
- 費用体系が明確で、依頼後の追加費用の心配がないこと
- 迅速に対応してくれること
医師に専門分野があるように、弁護士にも得意分野があります。
不倫トラブルの経験が少ない弁護士に依頼すると、適切な減額交渉ができず、不利な結果になる可能性があります。
必ず不倫問題に強い弁護士を選びましょう。
まとめ:不倫慰謝料請求は最初の対応が最も重要
不倫で慰謝料を請求された場合、初動の対応が結果を大きく左右します。
焦って誤った対応をすると、本来支払う必要のない金額を支払ってしまったり、職場や家族に知られてしまったりするなど、取り返しのつかない事態を招きかねません。
Aさんの事例でも最初に適切な対応ができたことで、300万円という法外な請求額から50万円まで大幅に減額できました。
不倫慰謝料の問題は、初動でどのように動くかによって、 最終的な負担額が10倍以上変わることもあるのです。
■重要なポイントのまとめ
- 請求を受けたら、まず冷静に請求内容・証拠・相場を確認する
- 相手の言い値での支払いや支払いの約束、示談書への安易なサインは絶対に避ける
- 弁護士が代理人の場合、相手方本人への直接連絡は違法行為となる
- 状況によっては慰謝料の支払い義務がない、または大幅に減額できるケースがある
- できるだけ相手方には何も返事をせず、すぐに弁護士に相談する
- 一旦自分で交渉してこじれてから弁護士に相談しても手遅れな場合がある
不倫慰謝料の問題は、一人で抱え込まず、できるだけ早い段階で不倫トラブルに強い弁護士に相談することが、最善の解決への近道です。
初回相談無料の法律事務所も多いので、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
適切な対応によって、あなたの権利を守り、精神的・経済的な負担を最小限に抑えられます。
一刻も早く、専門家のサポートを受けて、この困難な状況を乗り越えていきましょう。

