不倫の慰謝料相場は100万~200万円|請求できる6条件と請求方法
この記事を読んで理解できること
- 【実例】不倫相手への慰謝料請求~弁護士への相談から示談成立まで
- そもそも不倫とは?法律上の不貞行為と慰謝料請求の根拠
- 不倫慰謝料の相場|多くのケースは100万円~200万円
- 不倫の慰謝料を請求できる6つの条件
- 不倫の慰謝料を請求できる相手は?
- 不倫慰謝料の請求方法・手続きの流れ
- 不倫の慰謝料請求を成功させるポイント
あなたは、配偶者の不倫が発覚したとき、配偶者または不倫相手に、あなたが受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求できるのをご存じでしょうか。
しかし慰謝料といっても、実際にどれくらいの金額を請求できるのか、どのような手続きが必要なのか、わからないことも多いでしょう。
この記事では、不倫の慰謝料について、相場から請求方法、注意点まで、法律の専門家の視点からわかりやすく解説します。
まず最初に、実際に弁護士が受けた相談事例を通して、慰謝料請求の流れを具体的にご紹介します。
目次
1章:【実例】不倫相手への慰謝料請求~弁護士への相談から示談成立まで
不倫の慰謝料請求が実際にどのように進むのか、弁護士が受けた相談をもとに、具体的な事例を紹介します。
(※プライバシーの観点から、詳細な事実関係は一部修正しています。)
1-1:相談者の状況と悩み
■登場人物
- Aさん(女性):本件の依頼者。X法律事務所に相談に来た。
- Bさん(男性):Aさんの夫。
- Cさん(女性):Bさんの取引先、不貞相手。
■慰謝料請求までの経緯
AさんとBさんは、結婚10年目の夫婦です。
夫のBさんは「会社の飲み会」と言って帰りが遅くなることが増えました。
怪しく思いLINEを確認すると、取引先のCという女性と不貞関係にあることが発覚しました。
Aさんは、Cに慰謝料を請求したいと考えましたが、住所は分からず、職場と電話番号だけがわかる状態でした。
■Aさんの心情
「不倫なんてドラマの世界のことだと思ってたけど、まさか私が被害者になるなんて…」
「夫のことは許せないけど、貯金はほとんどないから慰謝料はCに請求するしかなさそう」
「でも、慰謝料請求って何をすればいいのかしら?」
「住所は分からないし、職場に書面を送ったら名誉毀損になるって聞いたことがあるわ」
「直接電話で話はしたくないし…」
このような不安を抱えたAさんは、X弁護士に相談することにしました。
1-2:弁護士への相談~住所不明でも請求できる?
■弁護士との相談内容
Aさん:…というわけで、これからどうすればいいんでしょうか?
X弁護士:本当にお辛かったですね。Cへの請求について、ご依頼をお受けします。
Aさん:ありがとうございます。住所が分からなくても請求ってできるんですか?
X弁護士:はい、できます。「弁護士会照会」といって、相手方の電話番号から住所を調査する手続があるんです。
Aさん:そんな方法があるんですね。知りませんでした。
X弁護士:弁護士会照会はすぐにできますが、弁護士会に1万円を支払う必要があります。よろしければ、まずは相手方に電話連絡をしてみましょうか?
Aさん:お願いします!
このように、弁護士に依頼することで、相手方の身元が完全に分からない場合でも、適法な手段で情報を調査し、慰謝料請求を進めることができます。
1-3:弁護士と不倫相手との交渉~実際のやり取り
X弁護士は、Cに電話をかけました。
■交渉の開始
X弁護士:Cさんで間違いないでしょうか?
Cさん:はい。
X弁護士:X法律事務所のXと申します。Aさんという方から依頼を受けました。あなたとBさんとの不貞行為を原因とする慰謝料として、300万円を請求します。
Cさん:私が不貞行為をしたっていう証拠があるんですか?
X弁護士:不貞行為を否認するという理解でよろしいでしょうか?そうであれば、訴訟を提起しますので、証拠は裁判で開示しますよ。
Cさん:ま、待ってください、否定したわけじゃないです。
X弁護士:私としては、あなたの言い分もしっかり聞いた上で判断したいと思います。そのためには、事実関係についての確認は欠かせないのでご理解ください。
■事実関係の確認
Cさん:確かに、不貞行為があったのは事実です。誘ってきたのはBさんの方ですけど…
X弁護士:わかりました。ちなみに、不貞行為をした当時、Bさんに妻がいることはご存じでしたか?
Cさん:はい、それは知っていました。
X弁護士:わかりました。こちらの請求額は300万円です。
■金額交渉
Cさん:300万円!?とても払えないです…
X弁護士:払えるか払えないかは、慰謝料の支払義務とは無関係です。少なくとも対案はいただけないと、こちらの依頼者を説得しようがありません。
Cさん:50万円くらいなら…
X弁護士:50万円でこちらが応じられなければ、裁判ということでよろしいですか?
Cさん:いや、できれば50万円がいいですけど、100万円までは一括で出せます。
X弁護士:それでは、100万円を頭金として、残額を分割でお支払いいただくということは可能ですか?
Cさん:まあ、それなら…
X弁護士:わかりました。私も依頼者を説得して、一定の減額には応じましょう。ところで、合意する際には書面を取り交わす必要があるので、ご住所を教えていただけますか?
■住所の確認
Cさん:教えないといけませんか?
X弁護士:強制はしません。ただし、弁護士の権限で調査することは可能ですので、いずれこちらは把握することになります。もしご住所が判明しないと、職場に書面をお送りせざるを得ないこともあります。
Cさん:わかりました。お伝えします。
X弁護士:ありがとうございます。依頼者と協議して、またご連絡しますね。
■交渉の結果
交渉の結果、相手方が150万円を支払う条件で示談が成立しました。
1-4:実例から分かる重要ポイント
この事例から、慰謝料請求における重要なポイントが見えてきます。
■相手方の「誘ったのは配偶者」という主張は通用しない
Cさんは「誘ってきたのはBさんの方」と述べましたが、これは慰謝料請求を妨げる理由にはなりません。
既婚者であることを知りながら関係を持った以上、責任は免れません。
■既婚者であることを知っていた事実の確認が重要
弁護士は「Bさんに妻がいることはご存じでしたか?」と確認しています。
この確認が慰謝料請求の成否を左右します。
■戦略的な交渉テクニック
- 最初に高めの金額(300万円)を提示し、交渉の余地を残す
- 証拠の開示をちらつかせ、否認を牽制する
- 相手方の対案を引き出し、支払能力を探る
- 一括払いと分割払いの組み合わせで柔軟に対応する
- 住所情報の取得も戦略的に進める
この事例では、最初の提示額50万円から150万円まで、3倍の増額に成功しています。
それでは次の章では、なぜ不倫の慰謝料を請求できるのか、その法的根拠から詳しく解説していきます。
2章:そもそも不倫とは?法律上の不貞行為と慰謝料請求の根拠
2-1:法律上の「不貞行為」とは
「不倫」は一般的に使われる言葉ですが、法律上「不倫」という用語は存在せず、「不貞行為」という用語が使用されます。
民法770条1項では、「配偶者に不貞な行為があったとき」を裁判上の離婚事由の一つとして定めています。
民法
(裁判上の離婚)
770条1項 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
1号 配偶者に不貞な行為があったとき。
最高裁判所は、不貞行為を「配偶者ある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」と定義しています(最判昭和48年11月15日)。
つまり、既婚者が配偶者以外の異性と自らの意思で肉体関係を持つことが不貞行為に該当します。
2-2:なぜ不倫されたら慰謝料を請求できるのか?
不貞行為は、「婚姻共同生活の平和の維持」という権利または法律上の利益を侵害する「不法行為(民法709条)」にあたります。
民法
(不法行為による損害賠償)
709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
不倫された配偶者は精神的苦痛を受けるため、民法710条に基づき「財産以外の損害」として慰謝料を請求する権利が発生します。
民法
(財産以外の損害の賠償)
710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
不貞行為は、物を盗まれたり体を傷つけられたりするような目に見える損害ではありませんが、精神的損害として賠償(慰謝料)を請求できます。
3章:不倫慰謝料の相場|多くのケースは100万円~200万円
3-1:慰謝料の基本的な相場とは?
不倫による精神的損害は、明確に金額を測定することができないため、裁判所が諸般の事情を考慮して決定します。
よくインターネットで「慰謝料の相場」という言葉を見かけますが、実際に法律で相場が決まっているわけではありません。
過去の裁判例から、「だいたい裁判所はこのくらいの金額を認めている」という傾向を相場と呼んでいるのです。
不倫による慰謝料の相場は、裁判例上、一般的に以下のようになります。
■離婚した場合:150万円~300万円
不貞行為によって離婚に至った場合、慰謝料は高くなる傾向があります。
婚姻関係が完全に破綻し、離婚という結果になったことで、被害者の精神的苦痛がより大きいと判断されるためです。
■離婚しない場合:50万円~150万円
不貞行為があったものの離婚には至らず、夫婦関係を継続する場合の相場です。
婚姻関係が継続されることから、離婚した場合よりも金額は低くなります。
以上の相場から「不貞行為の慰謝料は50万円~300万円」と言われますが、実際には50万円になるケースも300万円になるケースも極めて少なく、多くのケースは100万円~200万円です。
1章の実例でも、最終的に150万円で示談が成立しており、まさにこの相場内に収まっています。
3-2:不倫慰謝料の金額を左右する要素
慰謝料の金額を決定する際に考慮される主な要素は以下の通りです。
もっとも重要なのは、不貞行為によって離婚が成立したかどうかですが、それ以外にも様々な要因が考慮されます。
■不倫の期間の長さ
不倫期間が長期間におよぶほど、慰謝料は高額になる傾向があります。
過去の判例から、数ヶ月程度なら短いと判断され、年単位の場合は長いと判断される傾向があります。
■不倫の回数
不倫の回数が多いほど与える精神的苦痛も大きくなると考えられるため、慰謝料の金額も大きくなります。
過去の判例から、数回程度だと少ないと判断され、20回以上の場合は多いと判断される傾向があります。
■婚姻期間の長さ
婚姻期間が長いほど慰謝料が高額になる可能性があります。
婚姻関係が長く続いているほど、破綻した場合の精神的苦痛も大きいとみなされるためです。
■不倫がきっかけで別居や離婚をしている
不倫が直接的な原因で別居や離婚に至った場合、慰謝料の増額要因となります。
■小さい子どもがいる
未成熟の子どもがいる場合、両親の存在を必要としている子どもの利益が損なわれ、また育児の真っ最中に不倫をされることの精神的苦痛が大きいため、慰謝料の増額要因となります。
■不貞行為が発覚するまで夫婦関係が円満であった
不倫発覚前まで夫婦関係が円満であったほど、不倫による精神的ダメージが大きいと判断され、慰謝料が増額される傾向があります。
■妊娠の有無
不貞行為が原因で妊娠した場合、被害者の精神的苦痛だけでなく婚姻関係に与える深刻な影響から、慰謝料の大幅な増額要因となります。
不貞行為による妊娠は、離婚や慰謝料請求だけでなく、親権や養育費等も絡んでくるため、法的にも複雑な問題を引き起こします。
また、配偶者が妊娠しているにもかかわらず不倫した場合も、慰謝料の増額要因となります。
妊娠中は身体的・精神的に不安定な時期であり、配偶者に不倫されることは、生まれてくる子どもの将来に対する不安を引き起こすより深刻な問題とみなされます。
■不倫発覚後も関係を継続している
不倫発覚後、「不倫をやめること」「別れてほしいこと」を要求したにもかかわらず、不倫をやめない場合や、不倫相手に対して再三にわたって配偶者と別れるように要求したにもかかわらずそれを拒否し続けた場合は、慰謝料の増額要因となります。
■不倫された配偶者が精神疾患をわずらうなど、精神面の影響が大きい
不倫によって精神疾患を患った場合など、精神面への影響が深刻な場合は、慰謝料の増額要因となります。
■不倫発覚後の反省の有無
不倫が明らかになった際に、配偶者や不倫相手からの謝罪や心からの反省がなかった場合、交際解消の約束を破る、不貞行為の期間や回数について虚偽を述べるなど不誠実な対応があった場合は、慰謝料が増額される要因になります。
逆に、謝罪の姿勢を見せている場合は、慰謝料が減額されることもあります。
なお多くの裁判例では、不倫当事者の職業や地位、収入、資産の有無は不倫慰謝料を増額する理由とはされていません。
3-3:相場よりも高い不倫慰謝料を獲得できた裁判例
婚姻期間および不倫期間が数十年にわたる場合や、不倫相手の悪質性が顕著な場合には、相場を超える慰謝料が認められる可能性があります。
実際の裁判例を紹介します。
■不倫(不貞行為)の回数が多かったために慰謝料が増額された例
不倫(不貞行為)の回数が20回程度もあったことから、320万円の慰謝料の支払いが認められました。(岐阜地裁平成26年1月20日判決)
■婚姻関係の長さが慰謝料の増額要因になった例
夫婦関係が15年以上続いていたことから、それを破綻させられたことによる精神的苦痛は大きかったとして、婚姻関係の長さが増額要因になったケースがあります。
慰謝料は200万円が認められました。(東京地裁平成24年3月29日判決)
■不倫(不貞行為)をやめてくれなかったため300万円の慰謝料が認められた例
妻が夫の不倫相手に対して、再三にわたって夫と別れるように要求したにもかかわらず、それを拒否し続けたことから、不倫相手からの300万円の慰謝料の支払いが認められました。(東京地裁平成19年4月5日判決)
■謝罪がないことが指摘された例
不倫相手が不倫(不貞行為)について謝罪していないことを要因とし、他の事情と相まって慰謝料を増額し、慰謝料230万円の請求が認められました。(東京地裁平成20年10月8日判決)
慰謝料の金額を決める要素が、上記の判例でも慰謝料の算定に参考にされたことが分かると思います。
ただし、これらの判例は参考程度にとどめ、実際の請求額は弁護士と相談の上で決定することをおすすめします。
4章:不倫の慰謝料を請求できる6つの条件
不倫の慰謝料を請求するには、以下の6つの条件を満たす必要があります。
4-1:不倫相手の身元が確認できている
慰謝料を請求するには、相手方の氏名・住所が必要です。
これらの情報がない場合、請求自体が困難になります。
ただし、1章の実例のように、電話番号だけが分かっている場合でも、弁護士会照会などの法的手段により住所を調査することが可能です。
自分で調べても不倫相手の身元が分からない場合は、探偵事務所など専門家に調査を依頼することも検討しましょう。
4-2:配偶者と不倫相手に肉体関係があった
不倫の慰謝料請求の根拠となるのは、不貞行為(肉体関係)の存在です。
ただし、不貞行為の直接的な証拠を得ることは、実際には難しい場合が多いです。
そのため、ホテルに出入りする画像や記録、親密な関係を示すメール・LINEのやり取りなど、いくつかの状況証拠から不貞行為があったと推測できる場合は、請求が認められる可能性があります。
4-3:不倫相手は既婚者だと知っていた・知ることができた
不倫相手に慰謝料を請求するためには、相手が配偶者の既婚事実を知っていた、あるいは容易に知ることができた状況が必要です。
1章の実例でも、弁護士が「Bさんに妻がいることはご存じでしたか?」と確認し、Cさんが「知っていました」と認めたことが重要なポイントでした。
例えば、
- 職場の同僚で配偶者の存在を知っていた
- 結婚指輪を着用していた
- SNSで家族の写真が公開されていた
などの状況があれば、不倫相手は既婚者であることを知っていた、または知り得たと判断されます。
4-4:もともと夫婦関係は破綻していなかった
不倫が行われた時点で、夫婦関係が既に破綻していた場合、慰謝料請求が認められないか、あるいは大幅に減額される可能性があります。
例えば、
- 同居していた
- 家事や育児を協力して行っていた
- 夫婦としての会話や外出があった
など、夫婦関係が破綻していなかった事実を示すことが重要です。
4-5:不倫によって夫婦関係が悪化または破綻した
配偶者の不倫によって、それまで良好だった夫婦関係が悪化したり破綻したりして、精神的損害を受けたことを示す必要があります。
証拠としては、
- 不倫発覚後に別居状態になった
- 離婚の話し合いや離婚調停を申し立てた
- 精神的なショックで日常生活に支障が出た
などの事実があれば、不倫による夫婦関係への影響を示せます。
4-6:時効が成立していない
不倫の慰謝料請求権には、次のような時効があります。
- 不貞行為の事実と不倫相手を知ってから3年間
- 不貞行為があった時から20年間
「不倫相手を知った」とは、名前や住所など慰謝料請求が可能な情報が得られた場合を指し、不倫相手が存在することを知っただけでは時効期間は開始しません。
時効を過ぎてしまうと、たとえ他の条件を満たしていても、慰謝料を請求できなくなるので注意が必要です。
5章:不倫の慰謝料を請求できる相手は?
5-1:配偶者と不倫相手の両方に請求できます
不倫の場合、配偶者と不倫相手それぞれが慰謝料を全額支払う責任を負うため、不倫の当事者である両方に対して慰謝料を全額請求できます。
また、誰に請求するかは不倫された被害者が決められるので、配偶者や不倫相手のどちらか一人だけにも請求できます。
なぜなら、配偶者と不倫相手は、不貞行為を行った両方が連帯して債務を負うこと(連帯債務)になるため、共に慰謝料の支払い義務を負うからです。
ただし、配偶者と不倫相手の両方に請求はできますが、どちらか一方が慰謝料を全額支払った場合、もう一方は慰謝料を支払う必要はありません。
例えば、不貞行為の正当な慰謝料が200万円とした場合、不倫相手だけに全額請求することもできますし、それぞれに100万円ずつ請求することもできます。
ただし、全額の200万円を超える慰謝料は、受け取れないということです。
つまり、正当な慰謝料200万円の範囲内であればそれぞれから受け取る金額はいくらでも構いませんが、双方から200万円ずつ受取るなど慰謝料の二重取りはできません。
5-2:不倫相手だけに請求する場合は求償権に注意する
不倫した配偶者には慰謝料を請求せず、不倫相手にだけ慰謝料請求する場合、配偶者に対して不倫相手が求償権を行使するケースがあります。
■求償権とは
求償権とは、不倫の当事者の一人が慰謝料を支払った場合、もう一人の当事者に対して「支払った慰謝料の一部を請求できる権利」のことです。
例えば、不倫相手が慰謝料200万円を支払った場合、自己の負担分を超える金額の支払い(半額の100万円程度)をもう一人の当事者である配偶者に請求できるわけです。
不倫は、どちらか一方だけに責任があるとは言い難いことが多く、当事者両方に支払い義務があるため、求償権の負担割合は、「5:5」となるのが原則です。
ただ、必ず半分ずつになるわけではなく、事例によっては責任の大きさによって負担割合が変わることもあります。
■求償権のリスク
求償権のリスクとは、不倫相手だけに慰謝料を請求し全額支払ってもらったとしても、求償権を行使され配偶者が負担すべき慰謝料を請求されることです。
不倫が発覚しても離婚せず、不倫相手だけに慰謝料を請求するケースも多いです。
その際、不倫相手から配偶者へ求償権を行使された場合、夫婦の家計としては慰謝料を得られても、その後配偶者の負担割合に応じた額を支払うことになるからです。
例えば、求償権の負担割合が「5:5」で、不倫相手に200万円の不倫慰謝料を請求した場合、一旦、200万円の慰謝料は受け取れますが、配偶者が100万円の求償を受けると支払う必要があるため、夫婦の家計から見ると実質的に得られる慰謝料は100万円になってしまいます。
このように、不倫相手に求償権を行使されると、結果的には慰謝料が減額される形になるため、離婚しない場合は、慰謝料の交渉に合わせて求償権の放棄を求めます。
また、求償権の放棄を求めることで、慰謝料を受け取った後々まで、配偶者と不倫相手が求償権の問題で関わり合うリスクを避けられます。
6章:不倫慰謝料の請求方法・手続きの流れ
不倫慰謝料を請求する方法には、主に以下の4つのステップがあります。
状況に応じて適切な方法を選択しましょう。
6-1:ステップ①配達証明付き内容証明郵便を送付する
不倫慰謝料の請求方法に決まりはないものの、一般的には次の4項目を記載した配達証明付き内容証明郵便を送付します。
- 不倫の事実とその証拠
- 請求する慰謝料の金額とその根拠
- 支払期限と支払方法
- 応じない場合の対応(例:法的手段を取る旨)
■内容証明郵便のメリット
内容証明郵便は時効の完成を6カ月間猶予する効果があるため、配達証明付き内容証明郵便を利用することが一般的です。
この方法は、法的な効力はありませんが、請求の証拠となり、正式な文書で請求する意思を伝えるため、より真剣さが伝わるでしょう。
■注意点
内容証明郵便は弁護士だけでなく行政書士も作成できますが、代理人として和解交渉ができるのは弁護士だけです。
内容証明郵便の作成は、その後の和解交渉や訴訟につながる最初のステップであり、交渉を有利に進めるための大事な手続きであるため、弁護士に依頼することをおすすめします。
6-2:ステップ②直接会って話し合う(裁判外交渉)
内容証明郵便を受け取った相手方の回答に合わせてその後の対応を判断し、慰謝料の交渉を開始します。
相手方からの回答としては、支払いに応じる場合もありますが、慰謝料の減額を求めたり、あるいは不倫の事実を否定して慰謝料の支払いを拒否するケースも多いです。さらには、慰謝料の請求自体を無視される場合もあります。
■交渉のポイント
1章の実例でご覧いただいたように、弁護士が交渉を行うことで以下のような成果が期待できます。
- 相手方の否認を牽制し、事実関係を確認できる
- 相手方の支払能力を探りながら、現実的な金額に落とし込める
- 一括払いと分割払いを組み合わせた柔軟な提案ができる
- 感情的にならず、法的根拠に基づいて冷静に交渉できる
当事者同士の話し合いではお互いが感情的になりやすいため、かえって紛争が長引いたりトラブルになったりすることがあります。
また、請求した慰謝料を払ってもらえずに泣き寝入りする場合もあるので、できる限り最初から弁護士に依頼することが望ましいです。
■示談書(合意書)の作成
交渉の結果、合意できた場合は、「示談書」を作成しましょう。
【示談書に記載すべき8つの内容】
- 人物名
- 不倫の事実(期間や内容)
- 慰謝料の金額、支払方法
- 金銭以外の約束(接触禁止、守秘義務、迷惑行為の禁止)
- 違約金条項
- 完全解決条項
- 清算条項
- 署名、押印
不倫の慰謝料請求において作成した示談書は、「公正証書」で作成することをおすすめします。
示談書を公正証書にしておくことで、
- 加害者が慰謝料の支払を拒否した場合
- 加害者が示談書の内容に違反したため、違約金を請求したい場合
などに、強制的に支払わせることができるというメリットがあります。
6-3:ステップ③民事訴訟による請求
不倫相手との慰謝料交渉によって合意が得られなかった場合は、民事訴訟によって慰謝料を請求できます。
裁判所に対して訴状及び証拠等を提出し、不倫相手と争うことになりますが、裁判の途中で裁判官のすすめによって和解が成立することも多く、最終的には裁判官の判断によって慰謝料の金額等が決められます。
民事訴訟の手続きは複雑で提出する書類等も多いため、手続きをスムーズに進めてさらに公判を有利に進めるためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
6-4:ステップ④夫婦間の慰謝料の調停・訴訟による請求
夫婦間の話し合い(協議)がうまくいかなかった場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し立てます。
離婚調停では、裁判官1名と調停委員2名からなる調停委員会によって、双方の意見の聞き取りや条件面の話し合いが夫婦別々に行われます。
夫婦双方が離婚や離婚慰謝料に合意した場合は、合意した内容が調停調書に記載され調停離婚が成立します。
離婚調停で夫婦の合意ができない場合は、家庭裁判所に離婚訴訟を起こし、裁判所の判決によって離婚(裁判離婚)を成立させます。
裁判離婚が認められるためには、法定離婚事由が必要となりますが、配偶者の不貞行為が認められた場合は、夫婦の合意は必要なく裁判所からの離婚判決が確定することで離婚となります。
また、裁判の過程において、和解によって離婚が成立する場合もあります。
裁判離婚の場合は、法廷で争うことになるので、不利益な判決を避けるためには弁護士への依頼をおすすめします。
7章:不倫の慰謝料請求を成功させるポイント
不倫慰謝料を請求する際は、証拠をできるだけ多く集めたうえで、冷静な対応を心がける必要があります。
7-1:不倫の証拠をできるだけ多く集める
不倫の慰謝料請求を成功させるポイントとして、不倫の証拠の有無とその内容に大きく左右されます。
不倫の証拠として、以下のような証拠を可能な限り集めましょう。
- ホテルに出入りする写真や動画
- 肉体関係を持っているときの写真や動画
- 肉体関係があったことがわかるメール・SNSのメッセージ
- 不倫を認める書面・音声データ
- 探偵の調査報告書
自分で証拠を集めるのが難しい場合は、探偵事務所や興信所に依頼するのも有効です。
ただし証拠を集める際には、無断で配偶者のスマートフォンにアプリをインストールしたり、盗聴したりするなどの違法行為を行わないよう注意してください。
7-2:相手との交渉は冷静に行う
相手との交渉は、まず何よりも冷静さを保つことが重要です。
感情的になると適切な判断ができなくなり、後々不利な状況を招く可能性があります。
また、相手の言動に問題がある場合は、メールやメッセージ、録音など、可能な限り証拠として残しながら、毅然とした態度で対応しましょう。
曖昧な態度は、相手につけ込まれる隙を与えてしまう可能性があるため注意が必要です。
交渉で感情的になったり難航したりする場合は、無理に話を進めず、一度クールダウンの時間を設けることも有効です。
また、示談書の作成など法的な問題が絡む場合は、自己判断だけで進めるのではなく、早い段階で弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
■やってはいけないこと
感情的になって以下のような行為を行うと、逆に訴えられる可能性があります。
- 暴力をふるう
- 脅迫する
- 職場に不倫の事実を告げる
- SNSで相手の個人情報を晒す
- 執拗に付きまとう(ストーカー行為)
これらの行為は犯罪となる可能性があるだけでなく、慰謝料請求の正当性を損なうおそれがあります。
7-3:不倫問題の豊富な経験を持つ弁護士に相談する
不倫の慰謝料請求を成功させるためには、不倫問題の経験が豊富な弁護士に相談することが最も重要なポイントです。
1章の実例でも明らかなように、弁護士のサポートを受けることで、適正な慰謝料の獲得と円滑な問題解決が期待できます。
7-3-1:交渉を一任できるので精神的負担が軽減する
弁護士に依頼すれば、慰謝料請求から煩わしい示談交渉まですべて任せられます。
弁護士が代理人として配偶者や不倫相手、また相手側の弁護士と直接交渉を進めるため、あなたに直接連絡が来ることはありません。
そのため、不倫相手とのやり取りで不愉快な思いをする心配もなくなります。
また、内容証明郵便による慰謝料請求書の送付から示談書の作成まで、必要な手続きをすべて代行してもらえるので安心です。
7-3-2:より高額で適正な慰謝料の獲得が期待できる
不倫問題の解決実績が豊富な弁護士であれば、過去の裁判例や類似事例に基づいて、より高額な慰謝料の獲得を目指した戦略的な交渉が可能です。
1章の実例では、相手方の最初の提示額50万円から150万円まで、3倍の増額に成功しています。
自分一人で交渉するよりも、要求が認められる可能性や高額な慰謝料を獲得できる可能性が大幅に高まります。
さらに、相手が弁護士をつけてきた場合でも専門知識を持って対等に交渉できるため、適正な慰謝料金額での合意が実現します。
万が一、相手が示談書の条項や慰謝料の支払いを守らなかった場合も、違約金の請求などを適切に対応してもらえます。
7-3-3:裁判に発展しても最後まで任せられる
示談交渉で合意が得られず裁判(民事訴訟)によって慰謝料を請求する場合でも、弁護士に依頼していれば引き続き対応を任せられます。
訴状や証拠の提出、裁判所での主張など、民事訴訟の手続きは非常に複雑で専門的な知識が必要です。
しかし、弁護士に依頼することで手続きをスムーズに進められるだけでなく、法廷での主張を有利に展開することが期待できます。
裁判の途中で裁判官の勧めによって和解が成立するケースも多く、最終的には裁判官の判断で慰謝料額が決定されますが、その過程で弁護士の専門性が大きな力となります。
不倫の慰謝料請求を確実に、そして有利に進めたいのであれば、早い段階で不倫問題に精通した弁護士に相談することが成功への近道です。
まとめ:不倫の慰謝料請求|相場から請求方法、注意点まで
不倫による慰謝料請求は、被害者の正当な権利ですが、感情的になりすぎると逆効果になる可能性もあります。
不倫慰謝料の請求は、証拠集めや慰謝料金額の決定、相手との示談交渉まで、弁護士に相談し慎重に進めることをおすすめします。
■不倫慰謝料の相場|多くのケースは100万円~200万円
- 離婚した場合:150万円~300万円
- 離婚しない場合:50万円~150万円
実際の金額は、不倫期間、回数、婚姻期間、子どもの有無、不倫発覚後の対応など様々な要素で変動します。
■不倫の証拠集めが最も重要(違法な手段は避ける)
■慰謝料の請求方法
請求方法は、内容証明郵便、示談交渉、調停、訴訟の順で進めるのが一般的です。
不倫相手だけに請求する場合は、求償権に注意することが重要です。
■時効
- 不貞行為の事実と不倫相手を知ってから3年間
- 不貞行為があった時から20年間
不倫問題は非常にデリケートで複雑です。
自分では解決が難しい、高額の慰謝料を請求したい場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士のサポートを受けることで、より適切な解決策を見出し、新たな人生のスタートを切るための準備を整えることができるでしょう。

